改正前の法律では、高齢の義父母を介護していたとしても、子の妻(義理の娘)が義父母の相続人になることはありませんので、義父母にいくら療養看護に尽くしたとしても、子の妻が遺産を貰えることもありませんし、寄与分が認められることもありませんでした。
しかし、現状を踏まえると、子の妻が実質的に介護をしている場合が多く、相続人であれば寄与分が認められるような行いをしていた子の妻が何も貰えないことが問題視されてきました。
そこで今回の改正では、『子の妻等の相続人以外の親族が、相続人に対して寄与分に相当する金銭の支払い請求権(=特別寄与料請求権)』を認めることになりました。
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定(相続人の欠格事由)に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
相続人以外の親族とは、被相続人の6親等以内の血族、3親等以内の血族の配偶者等であり、内縁関係にある事実上の妻等は、相続人以外の親族にはあたりません。また、いくら懇意にしていても近所に住む赤の他人や、業務として介護をしていた介護士等には金銭請求権が認められることはありません。
具体的にどうやって金銭請求するの?
相続人以外の親族に、寄与分相当の相続人への金銭請求権が認められることになりますが、相続人以外の親族は相続人ではないため、遺産を相続できるわけではありません。ですので、遺産分けに参加して遺産から直接寄与分を貰うのではなく、遺産を相続した相続人に金銭請求をすることになります。
寄与分の額は、まずは相続人と金銭請求をした相続人以外の親族の協議で決めます。協議がまとまらなかった場合は、家庭裁判所の審判で決めます。
まとめ
(旧)民法では、子の妻が献身的に義父母の介護をしても金銭的請求権は認められていませんでした。介護にはノータッチだった遠く離れて暮らしている夫の兄弟が遺産を相続することは、(旧)民法でも改正民法でも同じですが、改正民法では子の妻に相続人に対する金銭請求権が認められたことになり、これまで不平等だった相続の規定が変更されることになりました。
今の日本の現状では、両親の介護は実の息子ではなく、息子の妻がするといった事例が多くみられます。親族の『特別寄与料請求権』は、多くの方にとって有用な規定になりそうですね。
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