※この記事の解説は、(旧)民法の条文についての解説です。改正民法についての解説は現在準備中です。
不法行為責任と債務不履行責任
交通事故は、平成29年の1年間だけでも47万2,165件発生しています。そのうち死者は3,694人です。(公益財団法人交通事故総合分析センター調べ)
交通事故の被害者は、加害者に対して損害を請求することができます。被害者の救済という観点から、不法行為責任と、債務不履行責任の両方の要件を満たす場合には、被害者はどちらかを選択して責任を追及することができるとされています。
例えば、タクシーの交通事故で乗客が損害を受けた場合には、不法行為責任と、運送契約に基づく債務不履行責任の両方の要件を満たしますので、被害者は自身にとって都合の良い方を選ぶことができます。
立証責任
不法行為があったのことの立証責任は、被害者(=損害賠償請求の債権者)にあります。被害者が、加害者に帰責性があることを立証しなければなりません。
これに対して、債務不履行責任の立証責任は、加害者(=債務者)にあります。加害者が自己に帰責性がないことを立証する必要があります。債務は履行することが当然ですので、自分に有利なことは自分で立証することが求められるのです。
過失相殺
被害者保護に資することから、不法行為責任を全面的に免除することはできません。また、賠償額を軽減することができますが、過失相殺を考慮するかは任意的措置になります。つまり、過失相殺をしてもいいし、しなくても良いことになります。
これに対して、債務不履行責任では、責任を全面的に免除することができます。また、過失相殺は必要的にする必要があり、必ず考慮しなくてはなりません。
損害賠償の範囲・方法
損害賠償の範囲は、不法行為責任では416条を類推適用しており、債務不履行責任では416条を適用しています。
416条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
また、損害賠償の方法は、不法行為責任においても、債務不履行責任においても金銭賠償が原則です。ただし、債務不履行責任においては、特約があれば、それによるとされています。
時効
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、又は、不法行為の時から20年を経過したときは時効によって消滅します。(民法724条)
債務不履行による損害賠償の請求権は、10年間行使しないと時効によって消滅します。(民法167条第1項)
履行遅滞の時期
不法行為責任は、損害の発生と同時に履行遅滞に陥ります。これに対して、債務不履行責任では、履行の請求を受けた時に履行遅滞に陥ります。(民法412条第3項)
穴埋め条文
724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害( ① )加害者を知った時から( ② )行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から( ⓷ )を経過したときも、同様とする。
①及び ②三年間 ③二十年
167条 債権は、( ① )行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、( ② )行使しないときは、消滅する。
①十年間 ②二十年間
耳で聞く条文解説【民法415条・709条】
【民法415条・709条】不法行為責任と債務不履行責任の解説を、すべて音声にしました。画面を見れない時でも、スマホなどで聞き流しながら学習することが出来ます。
わかりやすい解説を耳で聞き流すことにより、条文の理解をさらに深めてください。
終わりに
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