今回は、相続業務を例に、弁護士・司法書士・税理士・行政書士・土地家屋調査士・宅建士の仕事を紹介します。士業の仕事には専門分野や独占業務があり、必要に応じて連携を取りながら業務を進めていきます。
こんぶ先生
今回の記事は、相談者である”かずのこ”さんが、司法書士であるオーロラサーモン先生に相続の件で相談しにきたという想定で話が進みます。
※相続が発生した場合の手続の流れを分かりやすく解説するため、実務的な細かい流れは省略している点、ご了承ください。また、今回ご紹介した各士業の仕事はほんの一例であり、この他にも沢山の仕事があります。
オーロラサーモン先生
司法書士のオーロラサーモンです。どうぞ、宜しくお願い致します。
相続が起こったら専門家に相談を
かずのこ
今回は、亡くなった父の相続の件でご相談したいと思っています。遺産には父名義の自宅と畑があります。不動産がある場合は司法書士さんに相談するのが良いと聞きましたので、今回相談にあがりました。
不動産の名義変更(所有権移転)登記の申請代理ができるのは司法書士です。
かずのこ
母は既に亡くなっていて、子供は兄と私の2人です。相続人は子供である兄と私の2人になると思います。遺産は、先ほど申し上げた父名義の自宅と畑、銀行口座の預金1000万円です。
オーロラサーモン先生
お母様が既に亡くなっている場合は、お子様方が相続人になるので、今回の相続人はかずのことさんとお兄さんのお二人ですね。法定相続分は、遺産の2分の1づつです。
かずのこ
はい。しかし、私は生前に父と同居していまして、今も父名義の家に住んでいます。また、父と一緒に畑で野菜を育てていました。私としては家と畑を私が相続し、兄には預金1000万円を相続して欲しいと思っています。
オーロラサーモン先生
遺言があれば遺言の内容が優先されますが、なければ法定相続分ではなく、かずのこさんとお兄さんの遺産分割協議によって、そういった分け方をすることもできます。
かずのこ
はい。しかし兄は、「家と畑は1000万円以上の価値があるはずだ。売っぱらって現金にして、2人で分けよう」と言うのです。家や畑には沢山の思い出がありますし、不動産を売ってしまっては、私は住むところがなくなりますので、私は売りたくないのです。
相続が起こった場合には、まずは①相続人の把握、②相続財産の把握、③遺言書の有無の確認をすることが大事です。これらは依頼者からのヒアリングにて概要を知ることができますが、必ずしも依頼者の言うことが正しいとは限りません。依頼があった場合には、専門家は戸籍を収集したり、銀行への被相続人名義の預金の有無、遺言書の有無等を調査し、相続に必要な情報を把握します。
相続に必要な戸籍収集や相続財産・遺言書の確認は、相続人自ら出来ますが、相続業務を得意とする専門家(弁護士・司法書士・税理士・行政書士等)に任せるとスムーズです。
司法書士は、遺産分割協議に参加することはできません。あくまで公平な立場で、依頼者の相談にのることになります。
司法書士・税理士・行政書士は依頼者に代わって他の相続人と遺産分割協議をすることは出来ません。遺産分割協議について交渉が必要な場合には、弁護士に依頼することになります。
また、相続財産に不動産があるなど、遺産の財産価値が高額になる場合には相続税の申告が必要になる場合があります。相続税の申告の要否については、相談者の依頼を受けて税理士に判断を仰ぎます。
司法書士が依頼を受けた場合でも、相続財産価値の把握には税理士が協力することもあります。相続税の申告書類の作成・提出は税理士業務になります。
今回の相談は、かずのこさんが「もう一度お兄さんと話し合う」ということで終わりました。
弁護士・税理士の役割
数日後。
かずのこ
兄と話し合いましたが、話は平行線です。揉めに揉めてしまって…私個人では解決できそうにありません。テレビで見たのですが、家庭裁判所の調停というもので話し合いたいと思っています。
オーロラサーモン先生
分かりました。司法書士は、家庭裁判所に提出する調停申立書の作成は出来ますが、当事者として調停に参加することはできません。裁判所で当事者同士で話合うことも出来ますが、必要によって弁護士を紹介を致します。
司法書士は裁判所に提出する書類の作成業務ができます。
かずのこ
そうですか。では、弁護士さんを紹介して頂けますか。
オーロラサーモン先生
分かりました。相続に詳しい信頼の出来る弁護士を紹介致します。
司法書士・行政書士・土地家屋調査士・宅建士の役割
かずのこ
先生、先日は弁護士さんを紹介して頂きありがとうごあいました。弁護士さんが間に入ってくれたおかげで、調停をする前に話がまとまりました。自宅を私が、預金1000万円を兄が、畑を私と兄の2人の共有で相続することになりました。畑は今育てている野菜の収穫が終わったら売却して、売却代金を兄と2人で分ける予定です。
オーロラサーモン先生
それは良かったです。弁護士からも報告を受けています。それではその内容で遺産分割協議書を作成し、不動産については名義変更(所有権移転)登記を、預金については名義変更・解約手続きをしましょう。
遺産分割協議の内容に従って、オーロラサーモン先生は父名義の自宅の名義をかずのこさんに、畑の名義をかずのこさんとお兄さんの共有名義に変更する登記(所有権移転登記)申請をおこないました。申請してから1週間後に名義変更登記が完了し、銀行の預金はお兄さんが受け取りました。
それから数か月後。
かずのこ
畑の野菜の収穫が終わったので、古くから付き合いのある宅建士の友人に畑を売りたいと相談したところ、すぐに買い手が見つかりました。しかし、このままでは売れないので、司法書士さんに相談してくれと言われました。ちなみに買主さんは、畑を宅地にして家を建てたいようです。
宅建士は、不動産取引の専門家です。不動産を売買する際には、売買代金や契約適合責任等の契約内容を取決める必要があります。後々にトラブルにならないためにも、不動産取引のプロである宅建士に相談・依頼しましょう。
オーロラサーモン先生
そうですね。畑を売るには行政(農業委員会)の許可が必要になります。田んぼや畑は自由には売れないのです。ご自身で許可申請をすることも出来ますが、農地転用の許可申請手続が得意な行政書士に頼むとスムーズです。
行政書士は、行政手続きの専門家であり、許認可申請のプロフェッショナルです。官公署に提出する書類の作成とその代理・相談業務を生業にしています。
オーロラサーモン先生
また、畑の登記簿上の地目を宅地に変更する必要がありますね。地目の変更登記申請手続は土地家屋調査士が行います。
土地家屋調査士の代表的な仕事は、不動産登記の表示に関する登記申請手続の代理業務です。土地の地目は表示に関する登記であり、土地家屋調査士は現況調査をした上で必要書類を作成し、地目変更登記申請手続をおこないます。
かずのこ
分かりました。では行政書士さんと土地家屋調査士さんに手続きをお願い出来ますか。所有権移転登記は司法書士であるオーロラサーモン先生にお願いします。
その後、農地転用許可、地目変更、所有権移転登記が完了し、売却代金をかずのこさんとお兄さんで分けて、今回の相続案件は終了しました。
こんぶ先生
今回は相続業務を例に、各士業の仕事をご紹介しました。士業には得意とする専門や法律で定められた独占業務があります。案件をスムーズに進めるためには士業間の連携が大切になってきます。
今回ご紹介した資格者の仕事や資格試験の情報は、以下の記事でご紹介しています。
弁護士(司法試験予備試験)|司法書士|行政書士|土地家屋調査士|宅建士
また、宅建士の仕事については、「宅建士の仕事シリーズ」の記事で詳細にご紹介していますので、是非ご参考ください。
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