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今回は、民法697条「事務管理」についてです。
事務管理とは、ひとことで言うと「他人のためにするおせっかい」のことです。
事例
台風が来ている最中にAさんは留守にしていました。暴風雨で屋根が壊れているのを見つけた隣家のBさんは、Aさんに頼まれていた訳ではないけれども、親切心で屋根を修繕してあげました。
BさんにはAさんの屋根を修繕する法律上の義務はありません。このように、法律上の義務なく他人のために事務(※)を管理する行為を「事務管理」といいます。
(※)事務には法律行為ではなく、事例のように屋根を修繕するような事実行為も含みます。
それでは条文を見てみましょう。
民法697条 事務管理
697条
1項 義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない。
2項 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
事務管理は他人のために。
まず、「他人のために」事務の管理を始めたことが必要です。他人のためにする意思が必要なので、行為者には意思能力が必要です。行為能力までは必要ありません。
参考記事:酩酊状態でした行為は有効?無効?(民法3条の2 意思能力:民法条文解説)
ただし、他人のためだけでなく、自己の利益を図る意思が併存していても良いとされています。
先の事例でいえば、隣家の屋根瓦が飛んでいたので雨漏りを防いであげようとする他人のためにする意思と、屋根瓦が飛んできて自分の家の窓ガラスが割れるのを防ぐという自分のためにする意思が併存しても大丈夫です。
また、事例では「他人」が隣家のAさんと確定していましたが、首輪をつけた迷子の飼い犬を保護するといったように、誰々と確定していなくても事務管理は成立します。
法律上の義務なしに。
法律上の義務がある場合にした行為は、当然に成すべき行為なので、事務管理には相当しません。
継続
他人が事務を管理できる状態になるまで事務管理を継続しなければなりません。ただし、本人の意思に反し、本人に不利益であることが明らかな場合は、管理を中止する必要があります。
注意義務
事務を管理する者は、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)をもって管理をする必要があります。管理者が善管注意義務を欠いて本人に損害を与えた時は、債務不履行責任(415条)を負います。
報酬:なし
事務を管理して貰った人が、管理をした人に報酬を支払う義務はありません。
費用の前払い:なし
管理をして貰う人が、管理者に費用を前払いする義務はありません。
費用の償還義務:あり
事務管理が本人の意思に反しなかった場合は、本人は管理者が支出した有益な費用の全額を管理者に償還する必要があります。
事務管理の「有益な費用」は、一般的にイメージする「有益費」よりも広い概念であり、必要費も含まれます。
事務管理が本人の意思に反していた場合は、現に存する利益(現存利益)を償還すれば大丈夫です。
穴埋め条文問題
第697条
1項 義務なく他人のために( ① )を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない。
2項 管理者は、本人の意思を( ② )とき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
①事務の管理 ②知っている
耳で聞く条文解説【民法697条事務管理】
【民法697条】おせっかいな事務管理の解説を、すべて音声にしました。画面を見れない時でも、スマホなどで聞き流しながら学習することが出来ます。
わかりやすい解説を耳で聞き流すことにより、条文の理解をさらに深めてください。
おわりに
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