民法第107条 代理権の濫用
改正民法第107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
民法第107条は、(旧)民法の規定が改正され、新民法として規定されています。
新旧対照表 | |
(旧)民法107条 | 改正民法107条 |
1 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。 2 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。 | 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。 |
(旧)民法では、代理権の濫用について規定している条文がありませんでした。代理権の濫用とは、自己契約や双方代理(108)に抵触せずに代理行為を行ったけれども、代理人の本心では、その代理行為が本人ではなく、自己または第三者の利益のためにおこなった場合のことを言います。
(旧)民法時代は代理権の濫用が問題になる場面において、通説・判例では、原則としてその効果は本人に帰属するけれども、相手方が代理人の意図を知っていたか(悪意)又は知ることができた時(有過失)は、代理行為は無効となるとされていました(93条ただし書類推適用説)。
改正民法107条で、この代理権の濫用がされた場合について規定されたことにより、代理権の濫用が問題になる場面においては107条を適用して考えれば良いことになります。
一点注意すべきは、(旧)民法時代の93条ただし書類推適用説では、心裡留保の類推適用によって、代理権の濫用があった場合に相手方が悪意・有過失で会った場合は”無効”とされていましたが、改正民法107条では、”代理権を有しない者がした行為とみなす(無権代理)”とされている点です。
つまり、代理権の濫用による代理行為は、民法113条の無権代理の規定により、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないことになります。無効と違って、本人が代理人がした行為を追認する余地があるということです。
改正民法107条 代理権の濫用に関する過去問
(宅平30-2-1改)Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述は、民法の規定及び判例によれば、正しいか否か。
Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。
問題(穴埋め条文)
改正民法第107条 代理人が( ① )又は( ② )の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその( ③ )を知り、又は( ④ )ときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
①自己 ②第三者 ③目的 ④知ることができた
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