2020年4月1日に民法が変わりました
そんな私たちの暮らしに欠かすことのできない法律である民法は、明治時代(明治29年)1896年に制定されました。国民のルールを長年にわたり支えてきた民法が、この度120年の時を経て大幅に変更され、2020年の4月1日から新しい民法として施行されました。
なぜ民法が改正されたの?
明治時代から比べると、社会も経済も私たちの生活も、随分と様変わりしました。交通手段は発達し、ネット環境、スマートフォンがあればいつでも誰とでも話が出来ます。
実際に会う必要もなく、会議をしたり、契約を交わしたりもできる。本当に便利な時代になったものです。このような時代の急速な移り変わりによって、今のままの民法の条文では対応できない事が、沢山出て来ました。
これまで民法の条文にない事柄は、過去の裁判の結果(判例)をもとに答えを導き出したり、また時には慣習に基づいて対応をしてきました。でも、古い内容の民法と、進んだ現代社会とのギャップに大きなひずみが生じて、とうとう古い民法に限界!もう無理!改正して国民に分かりやすい法律にしましょう!という声が多くあがったのです。
沢山話し合いをした結果、民法が改正されることが2017年5月に決定し、2020年の4月1日から実際に施行される、という運びとなったわけです。
民法ってなんだろう?
そもそも民法とはどういったものなのでしょう。民法が全部で何条まであるのかを知っていますか?民法の条文は全部で1050条まであります。ちなみに憲法は103条までです。
日本には膨大な数の法律があって、法律家がよく手にしている六法全書、あの分厚い本に載っている『六法』というのは、全ての法律の基礎となる「憲法」「民法」「刑法」「商法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」の6つで成り立っています。
その六法の中の一つが『民法』で、主に社会で生活するための基本的なルールのようなものが定められた法律なのです。私たちに一番私身近な法律だと言えるでしょう。なので、民法が試験問題の科目として採用されている資格は、ものすごく沢山あります。
司法試験・司法書士試験・行政書士試験・弁理士・宅建士・公務員・ファイナンシャルプランナーなど、思いつくだけでもざっとこれだけあるわけです。民法がいかに重要な法律なのか、というのがよーくわかりますね。
まさに民法を制する者は資格を制するといっても過言ではないわけです。法律系の資格をゲットしたければ、民法は避けては通れず、絶対に学ばなければなりません。
そんな民法が大改正されたわけですから、資格の勉強を長年されている方は、特に知識のアップデートと整理が必要ですね。
民法の構造
民法は 『総則』『物権』『債権』『親族』『相続』というように、5つのカテゴリに分けられています。
- 総則 民法全般に共通する事(主に財産法)
- 物権 物に対する権利
- 債権 人に対する権利
- 親族 家族関係に関する事
- 相続 財産の継承に関する事
物権と債権は【財産法】、親族法と相続法は【家族法】というふうに分類され、上の図のような構成となっています。
今回改正されたのは、③『債権』の部分がほとんどで、”債権法改正”なんて呼ばれてたりもするぐらいです。*一部『総則』も改正がされています。
民法改正どこがどう変わったの?
民法が改正されるといっても、何もかも全部が変わるわけではなく、大幅に改正されるのは債権法の部分です。
債権法とは簡単に言うと、ある人物が他人に何かを要求することが出来る権利のことです。
例えばお金を貸したとします。「返してください!」と要求できる権利、他には、レストランで食事しました。「代金を払ってね!」と要求できる権利。このように『人に対して何かを要求できる権利』こういったものを債権といいます。
改正民法の重要なポイント | |
---|---|
時効 | 飲食店や飲み屋のツケ1年・小売店のツケ2年・診療費3年で権利が消滅するなどというように、業種ごとにバラバラだった短期消滅時効は廃止となり、「権利を行使できることを知った時」から、一律5年になった。 *「権利を行使できる時から10年」というのは存続で、今までと変わりありません。 |
敷金・原状回復 | 賃貸物件の敷金や、解約時の原状回復関係の判例法理を、具体的に明文化した。敷金は原則返金する事となった。経年変化による原状回復の義務は無くなり、賃借人の責任で生じた損耗以外は、原状回復しなくてもよくなった。 |
法定利率 | 法定利率は、今の民法では5%の固定制だが、昨今の低金利時代に対応し、民法改正後は年5%から⇒年3%になる。ただし、当初の法定利率を年3%とした上で、3年ごとに市場の金利に応じて1%刻みで利率を見直す変動制に変わる。 |
保証人保護の強化 | 個人根保証の極度額を定めなければならないとし、連帯保証人として最大でいくらまで責任を負担するかを契約書にその旨定めることが義務付けられた。事業の融資に個人保証は原則無効となった。 |
定型約款の新設 | 今までは、世間で様々な約款が利用されているにも関わらず、約款の規定が何もなかった。消費者は約款をほとんど読んでいないという現状も考慮し、改正民法では、消費者の不利になるような内容の約款は無効となる。但し、約款を契約内容とすることを予め示していた場合は、消費者は約款の内容を読んでいなくても有効となる。 |
以上、改正民法(債権法改正)虎の巻~第1弾、民法がいつどのようにかわるのか?でした。
予備試験ブログまとめサイト