代価弁済とは、抵当権付不動産を買い受けた第三取得者が、抵当権者の請求に応じて代価を弁済すれば、抵当権を消滅させることができることを言います。
抵当権の設定登記に後れる第三取得者は、抵当権が実行されると買い受けた不動産の所有権を失ってしまいます。
そこで民法は、第三取得者に対して、抵当権が実行される前に、その抵当権を消してしまう権利を与えました。
民法378条 代価弁済
第378条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
請求権者
相手方
ただし、代価弁済は抵当権を消滅させることができる「権利」ですので、抵当権者に代価弁済の請求があっても、必ずしも応じる必要はありません。
参考)抵当権者が請求すれば、保証人も代価弁済は可能。
効果
ここで注意するのは、消滅するのは抵当権であって、被担保債権ではありません。
例えば、被担保債権額が1000万円で、代価弁済の額が500万円であった場合、代価弁済が認められると抵当権は消滅しますが、残りの500万円は裸の債権(無担保債権)として債権者(元抵当権者)のもとに残ります。
買い受けたものが地上権の場合は、抵当権が消滅するわけではなく、地上権者は抵当権者に対して地上権を対抗することができるようになります。
例えば、ある土地の地上権者が代価弁済をした場合、抵当権者が競売を実行して競落された場合でも、地上権者は競落人に地上権を対抗できるので、そのままの状態で地上権を主張することができます。
穴埋め条文問題
第378条 抵当不動産について( ① )又は( ② )を( ③ )第三者が、( ④ )に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
①所有権 ②地上権 ③買い受けた ④抵当権者の請求
おわりに
また、抵当権を消滅させる制度としては、代価弁済のほかに抵当権消滅請求という仕組みがあります。
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抵当権消滅請求は、抵当権を消滅させる点で似たような仕組みですが、一番の違いは、第三取得者の方にイニシアティブがある点です。
その他、抵当権消滅請求は、所有権を取得した第三取得者のみに認められる点(代価弁済は、所有権又は地上権を取得した者)や、買い受けなくても贈与で譲り受けた第三取得者でも可能な点(代価弁済は買い受けることが必要)が、代価弁済と異なる点になります。
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