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民法条文解説・語呂合わせ

【改正民法13・14条】保佐人の同意を要する行為等と保佐開始の審判等の取消し(わかりやすい条文解説)

条文解説 民法13条14条
こんぶ先生
こんぶ先生
今回は民法13条の保佐人の同意を要する行為等と、民法14条の保佐開始の審判等の取消しについて解説します。

改正民法13条 保佐人の同意を要する行為等

改正民法第13条第1項 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
①元本を領収し、又は利用すること。
②借財又は保証をすること。
③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④訴訟行為をすること。
⑤贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成15年法律第138号)第2条第1項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
⑥相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
⑩前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

こんぶ先生
こんぶ先生
13条1項は、条文が長くてあまり読む気がしませんね・・・。ひとつひとつ分解して見ていくことにしましょう。

本を領収し、又は利用すること。(13条1項1号)

元本を領収すると、債権が消滅することになります。債権が消滅すると、貰えるはずだった利息が貰えなくなるので、被保佐人に不利益が生じることになります。

こんぶ先生
こんぶ先生
債権が消滅すると、一見保佐人にとって有利な感じがしますが、利息を受け取れなくなるという観点から、元本の領収は保佐人の同意を得て慎重にしないといけません。

尚、利息を受け取ることや、賃料を受け取ることは、保佐人の同意を得ずに被保佐人が単独でできます。利息や賃料を受け取るのは、保佐人にとって有利なことなので保佐人の同意は不要ですね。

財又は保証をすること。(13条1項2号)

借財は、借金と言い換えると分かりやすいですね。誰かの保証人になることも、借金するのと同様に簡単にしてはいけない行為です。

借財には、金銭債務の消滅時効の放棄も含まれます。消滅時効の放棄をすることは、新たな借金をしたのと同じことになるからです。

消滅時効完成(※)の債務承認も借財に含まれます。消滅時効が完成した後に債務承認をしてしまうと、払わなくて良くなった借金を払う必要が出てくるので、被保佐人に不利益ですね。

※これに対して、消滅時効完成の債務承認は、被保佐人が単独でできることも合わせて押さえておきましょう。

動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。(13条1項3号)

不動産を購入するには、一般的には多額の金銭が必要になりますね。保佐人の同意なしに被保佐人が単独で不動産を購入するのは、とても危なっかしい行為なので、保佐人の同意が必要です。

その他の重要な財産には、自動車、債権、有価証券、知的財産権等があります。

訟行為をすること。(13条1項4号)

訴訟行為は、原告として訴訟行為をすることを意味します。

これに対して、相手方(原告)保護のため、被告として訴訟行為をすること(=応訴)は、ここでいう訴訟行為には含まれません。応訴に同意等を要するとすると、原告が自由に訴訟提起が出来なくなり、訴訟に支障をきたすからです。

与、和解又は仲裁合意をすること。(13条1項5号)

贈与は、被保佐人の財産の減少を意味するので、被保佐人に不利益がおこらないように、保佐人の同意が必要です。

和解や仲裁合意には、互譲が必要です。互譲とは、その名の通り、お互いに譲り合うことです。譲り合いの程度によっては、被保佐人に不利益な内容で和解条項が定められ得る可能性があるので、保佐人の同意が必要になります。

続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。(13条1項6号)

相続の承認をすると、被相続人の財産を一切合切承継することになります。相続財産がプラスの財産だけであった場合は良いですが、相続財産の中に負債があった場合は、それも相続することになります。

仮にプラスの財産より借金が多かった場合は、被保佐人が借金を返していく必要が出てくるので、被保佐人が単独で相続の承認をするのは危険ですね。

貰えるはずだった財産を相続放棄することで貰えなくなってしまうのも、被保佐人にとって不利益です。同様に、遺産分割には他の相続人との調整が必要なので、被保佐人に不利益な内容にならないように、被保佐人の同意を得てする必要があります。

与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。(13条1項7号)

贈与の申し込みの拒絶や遺贈の放棄は、貰えるものを拒否して貰えなくなってしまうことになるので、被保佐人に不利益です。

負担付贈与や負担付遺贈とは、例えば固定資産税を払わなければならない土地を貰うことです。

築、改築、増築又は大修繕をすること。(13条1項8号)

建物に関することは、高額なお金が絡んでくるから保佐人の同意等が必要です。

こんぶ先生
こんぶ先生
家を新築することは、被保佐人でなくても慎重になるものです。被保佐人が新築する時に保佐人の同意が必要になるのは、当然といえば当然ですね。

602条に定める期間を超える賃貸借をすること。(13条1項9号)

いわゆる『長期賃貸借』を契約することです。これに対して、民法602条で定めた期間を超えない『短期賃貸借』の契約は、被保佐人が単独ですることができます。『短期賃貸借』の契約期間は、山林10年土地5年建物3年動産6カ月を超えない期間です。

こんぶ先生
こんぶ先生
『短期賃貸借』の契約期間は、「トー ゴー サン ロク (10 5 3 6)」というゴロ合わせがあります。

制限行為能力者の定代理人としてすること。(13条1項10号)

改正民法によって、「前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。」という規定が追加されました。

ゴロ合わせ(ガン シャク フ ソ ゾウ ソウ ゾウ シン ロッ ポウ)

さて、ここまで13条1項各号の保佐人の同意が必要になる行為を見てきましたが、これには「ガン シャク フ ソ ゾウ ソウ ゾウ シン ロッ ポウ(元 借 不 訴 贈 相 贈 新 6 法)」というゴロ合わせがあります。先に解説した13条1項列挙行為の頭文字をとったゴロ合わせです。

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13条2項・3項・4項 保佐人の同意権・取消権

第13条第2項 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

13条2項では、1項で定めた行為以外に、特に必要な行為について同意権を付与することができることを規定しています。

「ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。」とされています。つまり、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、被保佐人が保佐人の同意を得ずに単独ですることができます。

第13条第3項 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

13条3項では、保佐人が権利濫用を防止する意図の内容が規定されています。権利濫用した場合には、家庭裁判所は被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。

第13条第4項 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

13条4項では、取消権について規定しています。取消権があるのは、被保佐人と保佐人です。「取消権あるところに追認権あり」なので、被保佐人と保佐人には追認権があります。ただし、被保佐人が追認するには、保佐人の同意が必要です。

こんぶ先生
こんぶ先生
なお、成年被後見人は成年後見人の同意を得ても追認できません。そもそも成年後見人には同意権はありませんでしたね。

民法14条 保佐開始の審判等の取消し

第14条第1項 第11条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

第11条本文に規定する原因が消滅したとき”とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分でなくなった場合のことを言います。事理弁識能力を完全に回復した時のみならず、補助開始相当となるまでに回復した時も、この場合に該当します。

この場合は、以下の者の請求によって、家庭裁判所は保佐開始の審判を取り消すことになります。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族
  • 未成年後見人・未成年後見監督人
  • 保佐人・保佐監督人
  • 検察官

被保佐人が未成年者の場合は、未成年後見人や未成年後見監督人がついていることがありますので、これらの者も保佐開始の審判の取消を請求できる者に含まれています。

第14条第2項 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第2項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

14条2項では、過程裁判所が審判の全部又は一部を取り消すことができることを規定しています。

つまり、被保佐人であること(=全部)を取り消すことができるのはもちろんのこと、審判によって付与された保佐人の同意を要する行為(=一部)のみを取り消すこともできるということです。

問題(穴埋め条文)

第13条第1項 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
 ① )を領収し、又は利用すること。
 ② )又は保証をすること。
 ③ )その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
 ④ )をすること。
 ⑤ )、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成15年法律第138号)第2条第1項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
 ⑥ )若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
 ⑦ )の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
 ⑧ )、改築、増築又は大修繕をすること。
 ⑨ )に定める期間を超える賃貸借をすること。

⑩前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の( ⑩ )としてすること。

 


①元本 ②借財 ③不動産 ④訴訟行為 ⑤贈与 ⑥相続の承認 ⑦贈与 ⑧新築 ⑨第602条 ⑩法定代理人

こんぶ先生
こんぶ先生
今回は改正民法13条の保佐人の同意を要する行為等と、民法14条の保佐開始の審判等の取消しについて解説しました。
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