今回は、民法87条「主物と従物」、88条「元物と果実」、89条「果実の帰属」について解説します。
民法87条 主物と従物
87条第1項 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
“主物”とは、従物を付属させる対象となる物をいいます。例えば、母屋と納屋では、母屋が主物、庭園にある石灯籠では、庭園が主物です。
簡単にいうと「主物と従物はセット」です。主物と従物は、独立の資格を失わずに助け合って経済的効果を増幅する関係(母屋と納屋、庭園にある石灯籠等)にあります。
従物とは、主物の利用を継続的に助けるために、それに付属させた他の物をいいます。
従物は以下の要件を満たすことを要します。
- 継続的に常用に供され、主物の経済的効用を助けること
- 主物に付属する程度の場所的関係にあること
- 主物と同一の所有者に属すること
- 独立性を有すること
2個以上の別個の物がくっ付いて、結合した1個の物になることを付合といいます。そして付合により生じたものを付合物、又は合成物といいます。
第2項 従物は、主物の処分に従う。
個々の独立の物は、処分する時には別個独立のものとしてなされるのが原則です。
しかし、主物と従物には客観的・経済的な主従結合関係があります。そこで民法は、これを法律的運命を同一に取り扱って、主物の処分に従って従物も一緒に処分されることを要請しています。
元本債権と利息債権の間や、建物と敷地の賃借権の間など、主従関係は、物だけでなく、権利についても生じます。(元本債権・建物を主たる権利、利息債権・賃借権を従たる権利といいます。)権利についても87条2項が類推適用されると解されています。
元物と果実
88条 第1項 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
第2項 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
「元物」は果実を生じさせる物、「果実」は元物より生じる経済的収益のことです。
さらに果実は、「天然果実」と「法定果実」に分けられます。
天然果実とは”元物から経済的用途に従って収取される物”、法定果実とは”元物の使用の対価として受け取る金銭等”をいいます。
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また、民法第89条第1項では、「天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。」と規定し、同条第2項では、「法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。」としています。
問題(穴埋め条文)
87条第1項 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を( ① )とする。
第2項 従物は、( ② )の処分に従う。
88条第1項 物の用法に従い収取する産出物を( ③ )とする。
第2項 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を( ④ )とする。
89条第1項 ( ③ )は、その( ⑤ )から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
第2項 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、( ⑥ )によりこれを取得する。
①従物 ②主物 ③天然果実 ④法定果実 ⑤元物 ⑥日割計算
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