- 民法第15条 補助開始の審判
- 民法第16条 被補助人及び補助人
- 民法第17条 補助人の同意を要する旨の審判等
- 民法第18条 補助開始の審判等の取消し
民法第15条 補助開始の審判
第15条第1項 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
被補助人とは、①精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であり、②家庭裁判所から補助開始の審判を受けた人のことを言います。
家庭裁判所は、①精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であり、②請求権者から補助開始の審判の請求があった時は、補助開始の審判を必ずすることになります。
家庭裁判所への補助開始の審判は、以下の者から請求します。
- 本人
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 後見人・後見監督人
- 保佐人・保佐監督人
- 検察官
後見人・後見監督人や保佐人・保佐監督人が請求権者に入っているのは、成年被後見人や被保佐人の事理弁識能力が上がった場合に、成年被後見人や被保佐人から被補助人にするためです。
ただし書きには、「第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。」と規定されています。第7条は後見開始の審判、第11条は保佐開始の審判に関する規定です。
第15条第2項 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
補助開始の審判をするには、本人の同意が必要です。被補助人には一定の判断能力があるので、本人の自己決定権を尊重するためです。
第15条第3項 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項 の審判とともにしなければならない。
第17条第1項の審判とは補助人の同意権付与の審判、第876条の9第1項の審判とは補助人の代理権の付与の審判のことです。
補助人には、当然には同意権や代理権はありません。補助開始の審判のみがされても、補助人に同意権や代理権がないと、補助人は何もできないので、補助開始の審判は、必ず同意権付与又は代理権付与の審判とともにしなければならないとされています。
民法第16条 被補助人及び補助人
第16条 補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
被補助人には、補助人がつきます。補助人は数人でも法人でも良いことは、成年後見人や保佐人と同様です。
民法第17条 補助人の同意を要する旨の審判等
第17条第1項 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。
補助人には、当然には同意権はありません。被補助人は事理弁識能力が不十分なだけであり、一定の判断能力があるので、被補助人が単独で法律行為をすることができるためです。
ただし、補助人に同意権がないと被補助人の保護に欠けますので、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、検察官(以上、第15条第1項本文に規定する者)、補助人、補助監督人の請求により、13条1項各号列挙行為の一部に限り、補助人に同意権付与の審判をすることができます。
第15条第3項に規定されている通り、同意権付与の審判は、補助開始の審判とともにされます。
第17条第2項 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
補助開始の審判と同様に、本人以外の者の請求によって同意権付与の審判をするには、本人の同意が必要です。
第17条第3項 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
第17条第3項では、「補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。」と規定しています。
第17条第4項 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
被補助人が、補助人の同意又はこれに代わる許可を得てしないといけない行為を勝手にした場合には、補助人は、その行為を取り消すことができます。
民法第18条 補助開始の審判等の取消し
第18条第1項 第15条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
「第15条第一項本文に規定する原因が消滅したとき」とは、事理弁識能力が健常に回復した時のことを言います。事理弁識能力が回復した時は、一定の者の請求により、家庭裁判所は補助開始の審判を取消します。”一定の者”は、補助開始の審判の請求権者と同じです。
第18条第2項 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
家庭裁判所は、補助人に付与した同意見の全部又は一部を取り消すことができます。
第18条第3項 前条第一項の審判及び第876条の9第一項 の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。
同意権や代理権がなくなった場合には、補助開始の審判のみが残っていても無意味なものとなります。その場合は、家庭裁判所は補助開始の審判を取り消すことになります。
問題(穴埋め条文)
第15条第1項 精神上の障害により事理を弁識する能力が( ① )である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、( ② )の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
第15条第2項 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、( ③ )がなければならない。
①不十分 ②補助開始 ③本人の同意
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