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これから宅建士の資格を取ろうかと考えていたり、試験に合格して免許を取得したものの、これから不動産業に従事しようかどうか、悩んでおられる方も沢山おられるのではないかと思います。
資格を取った後に、不動産会社に就職し、宅建業に従事したとしたら、一体どのような仕事に携わることになるのでしょうか。
不動産の仕事と一口に言っても、宅地の造成や開発、不動産売買、仲介(賃貸・売買)、管理業など、様々な種類がありますが、今回は売買の不動産流通業(仲介)の、おおまかな仕事の流れを簡単にご説明したいと思います。
宅地建物取引業と、不動産業は同じじゃない
- 土地の開発や造成・・・土地を仕入れて建物を建築し販売
- 流通業(売買)・・・売買の仲介業務
- 流通業(賃貸)・・・賃貸の仲介業務
- 不動産賃貸業・・・・不動産を人に貸すなど、大家業
- 不動産管理業・・・・不動産の管理(清掃など)
この中で宅建業は、①の土地の開発造成・②③の流通業務(売買・賃貸仲介)です。宅建業は、『宅地建物取引業法』という法律で規制されていて、都道府県知事または国土交通大臣の免許が必要です。
ここでいう、宅建業を営むための許可である免許と、宅地建物取引士の免許は全く別物なので、混同しないようにしましょう。宅建士の免許は宅地建物取引士試験に合格した個人に与えられる資格で、宅建業は会社に与えられる営業許可証のようなものです。
宅建業を営むためには宅地建物取引士の必置義務があります。宅建業者は、宅建士試験に合格し、都道府県知事から宅地建物取引士の交付を受けた資格取得者を、5人に1人以上の割合で、事務所ごとに設置することが義務付けられています。
④不動産賃貸業と、⑤不動産管理業に関しては特に許可や届け出等が必要なく、誰もが行える不動産業です。マンションの家主や、マンション管理会社の仕事は宅地建物取引業ではありません。
不動産業とは、不動産に関わる業務全般のこと。宅建業は主に仲介や開発業務のことです。
不動産仲介業務の大まかな流れ~
売主への対応
売却の相談を受けたら、まずは物件の調査をします。現地や法務局、役所などへ足を運び、権利関係や法令上の制限・地域の特性を調べます。
調査が終わったら、調査結果などをもとに価格査定を行い、販売価格を決定します。周辺の類似物件との取引事例などを参考にしつつ、売主の希望販売価格も考慮しながら、バランスよく価格を決めましょう。
価格が決まったら、売主と媒介契約を締結します。媒介契約の際、2018年4月1日施行の改正宅建業法に基づいて、*ホームインスペクションの斡旋も忘れずに行いましょう。
その後、販売活動を行います。販売活動とは具体的に、レインズに物件を登録・新聞広告・HP掲載・ポスティング・現地販売会などです。購入希望者が現れて、販売交渉がまとまったら、売買契約を結びます。
最後に決済が完了したら、不動産を買主に引き渡して売却手続き完了です。
買主への対応
購入の相談を受けたら、広さ、間取り、希望のエリアなどの条件を伺います。家族構成など、将来に向けてのライフプランなども考慮しながら購入予算を決めます。
予算が決まれば資金計画に基づいて、物件を探します。買主と媒介契約を結んだら、希望に近い物件をお客様に紹介し、現地へ案内します。お客様が購入の意思を示したら、売り主へ購入の申し込みをします。
購入物件に関する重要事項の説明をします。重要事項説明書の内容に納得頂いたら、売り主と売買契約を結び、手付金をお支払い頂きます。ローンを使う場合は資金借り入れの手続きを行い、決済日に代金をすべて払ったら、引き渡しを受けて購入手続き完了です。
媒介契約は『専任』『専属専任』がおすすめ
媒介契約には『一般媒介契約』『専任媒介契約』『専属専任媒介契約』の三種類があり、一般媒介契約は他の業者にも媒介の依頼が出来るという点が、大きな違いです。専任と、専属専任の主な違いは、自分で取引相手を探してもよいかどうか、という部分です。
『一般媒介契約』の場合、媒介契約期間中であっても、他の業者の仲介で成約してしまうと、仲介手数料は一切発生せず、収入になりません。
その点、『専任』や『専属専任媒介契約』の場合は、契約期間内は他の業者が介入出来ませんので、媒介契約期間内に取引をまとめることが出来さえすれば収入に繋がります。
良い案件であればあるほど、専任媒介契約または、専属専任媒介契約をお客様と締結することが望ましいと言えるでしょう。
*ホームインスペクションとは
ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、専門家の見地から、取引物件について診断を行うものです。いわば住宅の人間ドックみたいなものです。
2018年4月1日より、宅地建物取引業法改正案が施行され、中古住宅取引の際ホームインスペクション(住宅診断)の説明が義務化されました。ホームインスペクションの実施そのものの義務化ではなく、不動産業者から売主や買主に対して、斡旋や説明を行う事が義務化されたのです。
- ホームインスペクションについて説明、斡旋をすること
- 既にホームインスペクション実施済ならその調査結果を説明すること
- 売主と買主が建物の状況について書面で確認すること
不動産取引の媒介契約を結ぶ際、または、重要事項説明の時において、住宅診断を斡旋したかどうかの有無や、住宅診断をしていれば、その内容についても説明しなければなりません。
*売主だけでなく、買主に対しても斡旋することが必要です。
宅建士としての重要な責務
宅建士には、宅建士だけにしか出来ない、重要な独占業務があります。
その重要な業務とは、売買や賃貸借などの契約前に、物件の重要事項説明を行うことです。重要事項説明は、お客様に物件のことを十分に理解してもらい、納得をしてもらった上で売買契約を結ぶことが出来るよう、仲介をする不動産会社が、買主または借主に対して行います。
重要事項説明書(35条書面・重説とも言う)は、要は物権の説明書です。説明する事項は『宅建業法第35条』に定められており、重要事項説明を実際に行うことが出来るのは、宅地建物取引士の資格保有者のみです。説明を行う際は必ず取引士証を提示して行わなければなりません。
特に、売買の場合の重要事項説明書は説明項目が多い為、説明に1時間以上かかります。専門用語が山ほど羅列してありますので、簡単な分かりやすい言葉に置き換えたり、分かりやすいように例え話を交えたりしながら説明するといいでしょう。
重要事項説明の他に、重要事項説明書(35条書面)と、契約書(37条書面)に記名押印するという事も、宅建士のみが出来る仕事です。
最後に、宅建士としての心構えと信条
資格取得はあくまでもスタートラインです。宅建士の資格が取れたからと言って、すぐに不動産取引がテキパキ出来るのかというと、そうではありませんし、すぐに独立をして不動産会社を設立するというのも難しいでしょう。
試験勉強と実務は必ずしもイコールではなく、不動産取引に関する知識のほとんどは、経験から身についていくといっても過言ではありません。勉強を沢山した上に、不動産取引の実務経験をいくつも積み重ねていくことによって、徐々に不動産のプロフェッショナルになるのです。
とはいえ、宅建士の資格を有している人は基礎知識がある分、宅建士の資格勉強をしていない人よりも確実に呑み込みが早いですから、不動産会社で重宝されることは間違いなく、資格があなたの強みとなる事でしょう。実際に宅建士は、資格手当(5千円~3万円程)が付くという会社がほとんどです。
宅建士の資格があれば、大切なお客様の財産である不動産の取引において、不動産会社の営業マンとしてお客様をサポートするだけではなく、宅建士としても不動産取引に携わることが可能です。宅建士として重要事項や契約書についての責任も持つことによって、よりお客様から信頼され、同時に仕事に対してのやりがいも感じることが出来るのではないでしょうか。
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