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自分が死んだ時に自分の財産はどうなるのでしょう?はたまた親が亡くなった時の遺産の整理はどのように行えばいいのでしょうか。
残された家族のために、そして自分が死んだ後に、家族や身の回りの方に自分の意思を伝える一つの方法に「遺言」という制度があります。
遺言のやり方はひとつではない
一口に遺言といっても、その方式には色々と種類があります。
大きく「普通方式」と「特別方式」がありますが、ここでは身近な普通方式の遺言の方式についてご紹介します。
自筆証書遺言
亡くなった方(=遺言者といいます。)自らが、遺言の全部の内容、日付、氏名を自分で書き、それに押印することによって成立するものが「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言による場合、たとえ字が汚くても自分で全文を書かないと無効になります。ただし、民法改正によって、相続財産目録は自筆でなくてもよく、署名押印した預貯金通帳のコピーや不動産登記簿謄本のコピーをつけても大丈夫になりました。
公正証書遺言
証人2人の立ち合いのもとに、遺言者が公証人に遺言の内容を伝えます。
伝えられた内容を公証人が筆記し、これを遺言者と証人が読み聞くか閲覧します。
問題なければ、遺言者と証人が各自これに署名し印を押します。
最後に公証人が前述の正しい方式に従って作られたものであることを付記して、これに署名し、印を押して作成されます。
秘密証書遺言
封印した遺言書に、公証人の公証を受ける遺言をいいます。
遺言者が遺言を作成し、その証書に署名・押印します。それを遺言者が封じ、証書に用いた印章を押して封印します。
これを公証人1人と証人2人以上の前に提出して、自分の遺言書であることと、氏名・住所を申述します。
公証人が、証書を提出した日付と遺言書の申述を封紙に記載した後、遺言者と証人とともにこれに署名し、印を押すことで成立します。
また、秘密証書遺言は自書が要求されていないので、パソコンで作成しても大丈夫です。 必ず自分の文字で書かないといけないのは、「自筆証書遺言」だけです。
一般的に遺言と聞いて思い浮かべるのもこの自筆証書遺言ではないでしょうか。
今回は、この「自筆証書遺言」について見ていきたいと思います。
民法968条
条文
民法では、自筆証書遺言について968条で定めています。
968条 第1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
第2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
第3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
第一項に、しっかりと「遺言者が」と書かれていますね。 ではいつものように、条文を分解して見ていきましょう。
要件
第1項 自筆証書によって遺言をするには、
始まりの部分は、特に重要な点はありません。色々とある遺言の方式の中で、自筆証書遺言をするにはこうしなさい、と書いているだけですね。
遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
遺言者には以下3点の自書が求められています。
- 全文
- 日付
- 氏名
さらに押印することが必要です。
日付は、その日が特定されないといけません。
氏名は、「氏名」と書かれているにも関わらず、遺言者が特定されれば氏又は名のどちらかでも大丈夫です。けれども、万が一誰の遺言かわかなくなってしまっては困るので、遺言を書く際には、氏名を書いておくのが無難でしょう。
印は、実印ではなく、拇印でも指印でも大丈夫です。
第2項 解説
第2項は改正によって追加されました(2019年1月13日施行)。改正前は全文の自書が必要でしたが、遺産目録についてはパソコンで作成したものでもOKとなりました。
遺産目録とは、例えば不動産(土地)であれば、その土地の所在・地番・地目・地積を書いたものです。
遺産目録には毎葉、遺言者による署名押印が必要になります。また、預貯金通帳や登記簿謄本のコピーに署名押印したものも遺産目録として添付可能とされています。
第3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、
第一項と同様に、始まりの部分は、特に重要な点はありません。
その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、
ここでは「場所の特定」「変更した旨を付記」「署名」が求められています。
かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
最後に印を押すことが必要です。
ただし、この訂正の要件を満たしていなくても、明らかな誤記の訂正などは、大目に見てもらえます。訂正の仕方が無効でも、遺言全体は無効にはならないという判例があります。
要件のまとめ
自筆証書遺言の成立要件は4つ、訂正要件も4つ
遺言者が、「全文の自書」「日付の自書」「氏名の自書」「押印」すること。
訂正は、遺言者が「場所の特定」「変更した旨を付記」「署名」「押印」すること。
自筆証書遺言は、公証人や証人が関わりませんので、確かに本人が書いたという真実性が重要になります。自筆証書遺言は「遺言者が自書する。日付も正確に書く。」ということをイメージすることが大切です。
問題
それでは問題にチャレンジしてみましょう。
自筆証書遺言は、遺言内容の全文・日付・氏名を自書する必要があるが、遺産目録以外でも、全文に関しては、文字数が一定数を超えるとワープロで作成した遺言書も有効とされる。○か×か。
自筆証書遺言には、全文・日付・氏名の自書が必要です。内容が長文になってもワープロで作成することは認められていません。一部ワープロでの作成が認められているのは遺産目録です。
遺言は厳格な要式行為なので色々とお決まりがあります。死亡者の最後の意思表示なので間違いがあってはいけないから厳格にならざるを得ないですね。答えは×になります。
続いて、穴埋め条文です。
穴埋め条文
- 第968条1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その( ① )、( ② )及び( ③ )を( ④ )し、これに印を押さなければならない。
①全文 ②日付 ③氏名 ④自書
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