民法第90条 公序良俗
改正民法第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
(旧)民法第90条では、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と定められていました。改正によって”事項を目的とする”という文言が削除されました。
「公の秩序」とは、国家又は社会の一般的利益のことを言います。
「善良の風俗」とは、社会の一般的倫理のことを言います。
公序良俗に反して無効とされた例
- 殺人契約
- 暴利行為(ex.法外な高利貸し、莫大な違約金契約)
- 賭博
- 妾契約(愛人契約)、芸娼妓契約
- 女子のみに定年につき差別的扱いをする定め
例えば、AさんとBさんが、「Aを殺害したらBさんに100万円あげる」とする契約は無効です。契約は、私的自治の原則により自由に締結できるはずですが、こういった犯罪や違法性のある内容を含む契約は、公序良俗に反して無効です。
「借金を返せないなら、体で払え」「月々○○で愛人になる」も公序良俗に反して無効です。
日産自動車女子若年定年制事件
その昔日産自動車では、就業規則で定年の年齢を女性は男性より5歳若く設定していました。これを性別による不当な扱いであり、不合理な差別であるとして、定年退職を命じられた女性が、当該就業規則は違法であるとして訴えを提起しました。
判例は、「定年年齢において女子を差別すべき合理的理由は認められず、当該規定はもっぱら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものである」として、民法90条の公序良俗に反する定めとして無効としました。
民法第91条 任意規定と異なる意思表示/慣習
民法第91条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
民法第92条 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
任意規定とは、公の秩序に関しない規定で、当事者間の特約が優先する規定のことをいいます。これに対して、強行規定とは、当事者間の特約は優先されず、特約によっても法律の規定を排除できない規定のことを言います。
民法第90条(公序良俗)に関する過去問
(行平30-27-5)男子の定年年齢を60歳、女子の定年年齢を55歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。
問題(穴埋め条文)
民法第90条 ( ① )又は( ② )に反する事項を目的とする法律行為は、( ③ )とする。
①公の秩序 ②善良の風俗 ③無効
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