民法第21条 制限能力者の詐術
第21条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
民法第21条では、「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない」と規定しています。取り消すことができなくなることにより、その行為は完全に有効な行為となります。
詐術とは、簡単にいうと「取引の相手方をだます」ことです。相手方をだましてした行為は、いくら制限行為能力者であっても、その行為を取り消すことはできません。
制限行為能力者のする詐術には、自分が行為能力者であると直接的に偽ることはもちろんのこと、「最近タバコを吸える場所が少なくなったなー」といったように、間接的に相手方をだますような発言や行動と相まって、結果的に相手方が誤信して取引をしたような場合も詐術にあたります。
また、同意が必要な行為について、「同意を得た」と嘘をついて取引をしたことも詐術にあたります。
ただし、単に制限行為能力者であることを黙秘するだけでは、詐術にはあたりません。
尚、相手方は詐欺を理由に取り消すことはできません。行為能力に関する詐術は、法律行為そのものについて騙す意図があるわけではなく、法律行為の効果意思(=表意者が一定の効果の発生を欲する意思)には瑕疵がないからです。
相手方が、制限行為能力者がした詐術について悪意の場合は、制限行為能力者はその行為を取り消すことができます。
→相手方が悪意の場合は、相手方を保護する必要はないからです。
詐術により制限行為能力者が取消権を喪失した場合でも、別途錯誤の要件を満たしていれば、制限行為能力者は無効主張をすることができます。
→民法21条の規定は、制限行為能力を理由として取消できなくなることを規定しているのであって、錯誤無効の主張の可否とは適用場面が異なるからです。
民法21条(制限能力者の詐術)に関する過去問
(宅28-2-4)被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。
(行22-27-2改)AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当か否か。
Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。
(司19-6-オ)成年被後見人が契約を締結するに当たって、成年後見に関する登記記録がない旨を証する登記事項証明書を偽造して相手方に交付していた場合には、相手方がその偽造を知りつつ契約を締結したとしても、その成年後見人は、当該契約を取り消すことができない。
問題(穴埋め条文)
第21条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため( ① )を用いたときは、その行為を( ② )ことができない。
①詐術 ②取り消す
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