709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不法行為
民法709条では、不法行為による損害賠償の規定として、“故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。”と定めています。しかし、台風等の自然災害は、”故意又は過失”が存在しないため、不法行為に基づく損害賠償請求をすることが出来ないのが原則です。
ただし、例えばもともと看板を止めているネジがゆるんでいた等で、自然災害の有無に関わらず、安全注意義務違反が認められる場合には、損害賠償を請求できることがあります。
- 故意又は過失があること
- 違法性が認められること
- 責任能力があること
- 行為と損害に因果関係があること
①故意又は過失があることが必要なので、先に紹介したように、台風等の自然災害による不可抗力による場合には、①に要件が満たされないので不法行為による損害賠償請求はできないことになります。
②他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する等の違法性が要件になります。正当防衛や緊急避難によって違法性が阻却される場合には、この要件は満たされません。
⓷責任能力とは、自分のしたことが違法なものとして法律上非難されるものであることを弁識できる能力のことを言います。概ね12歳くらいが基準になります。
④行為と損害の間に、相当因果関係(=「アレなければコレなし」の関係)があることが必要です。
また、不法行為の帰責性の立証責任は、債権者(=被害者側)にあります。先の例で、「台風がきっかけだったけど、そもそもネジがゆるんでいたはずだから安全注意義務違反で損害賠償請求したい!」と主張しても、立証責任は被害者にあるので、証拠がないと、実際には損害賠償請求するのは難しいでしょう。
土地の工作物等の占有者及び所有者の責任
717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
先の例では、看板が飛んで通行人にケガをさせた場合の例でしたが、民法717条では、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり、それによって他人に損害を与えた場合の責任について規定しています。
例えば、家の所有者AさんからBさんが賃借して住んでいる場合に、ブロック塀が倒壊して通行人にケガをさせたという例で考えてみましょう。
民法717条では、一次的には占有者に賠償責任があり、二次的に所有者の賠償責任があると規定しています。ブロック塀が老朽化のために倒壊した場合には、賃借人Bさん(=占有者)には過失はありませんから、所有者Aさんが責任を負うことになります。占有者Bさんは過失責任ですが、所有者Aさんは無過失責任です。
ただし、ブロック塀の倒壊の瑕疵と損害の間に因果関係があることが必要です。ブロック塀の設置又は保存に瑕疵が無く、台風等の不可抗力でブロック塀が倒壊して通行人にケガを負わせた場合には、ブロック塀の倒壊の瑕疵と損害に因果関係が認められないので、占有者及び所有者は責任を負うことはありません。
穴埋め条文
709条 ( ① )又は( ② )によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
①故意 ②過失
717条 土地の工作物の設置又は保存に( ① )があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の( ② )は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、( ② )が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、( ⓷ )がその損害を賠償しなければならない。
①瑕疵 ②占有者 ③所有者
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