2015年の1月から改正された相続税が適用となりました。この改正により、課税対象となる被相続人の人数が大幅に増えました。
不謹慎かもしれませんが、相続は、人が生きていて大金や土地などの資産を自分では何もせずに手にできる最大のチャンスです。そのチャンスをみすみす逃す手はありません。
もし、そのようなチャンスに水をさすことが起こったらどうするでしょうか。例えば、相続人でない人に、勝手に相続権を主張され、相続財産である土地を占有された場合等です。
そういった場合に民法は、「相続回復請求権」という侵害された財産を取り返す制度を定めています。
相続回復請求権
884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする
表見相続人は、例えば相続欠格者や相続から廃除された者が考えられます。
また判例は、真正な相続人であっても、相続分を超える部分について侵害をしている場合は、相続分を超える部分は表見相続人とされ、相続回復請求権(884条)が適用されるとされています。
相続分を超える部分の侵害とは、共同相続人のうちの一人が自己の持ち分を超えて占有管理をしている等が考えられます。
相続回復請求権は表見相続人に有利?
相続回復請求権は、相続権を侵害された事実を知った時から5年で時効で消滅するとしています。
ここでちょっと立ち止まって考えると、5年という短期消滅時効にかかるのは、いつまでも権利を主張される訳ではないので、相続権を侵害している表見相続人にとって有利な規定であることが分かります。
これは、相続回復請求権が早期の法律関係の安定のために定められた権利であるために、結果として表見相続人に有利な規定となっているのです。
ちなみに、表見相続人が相続回復請求権の消滅時効を援用する場合は、表見相続人側に善意・無過失であったことの立証責任があります。
請求権者
相続分の譲受人も、相続人の地位を譲りうけているので、相続回復請求権を行使できます。
ただし、相続分の特定承継人は、「この土地」「この債権」といったように、相続財産の中の一部を譲り受けるだけであり、相続人の地位そのものを譲り受けたわけではないので、相続回復請求権は行使できません。
請求の相手方
表見相続人からの第三取得者は相続回復請求権の相手方とはなりません。すなわち、第三取得者は短期消滅時効の主張は出来ないということです。
また、相続回復請求権の行使は訴えによらずにすることができます。
※この点、必ず訴えによらなければならない詐害行為取消権とは違います。ちなみに債権者代位は必ずしも訴えによらずにできます。
「知った」の要件は?
自分が真正な相続人であることを知り、かつ、自分が相続から除外されていることを知ったことにより「知った」の要件を満たします。
また、884条は、相続回復請求権によって真の相続人を守りたい主旨がありますので、たとえ表見相続人が取得時効の要件を満たしても、相続回復請求権の消滅時効の進行中は相続権を時効取得することができないとされています。
穴埋め条文問題
884条 相続回復の請求権は、相続人又はその( ① )が相続権を侵害された事実を知った時から( ② )行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から( ③ )を経過したときも、同様とする
〈正解〉
①法定代理人 ②五年間 ③二十年
おわりに
私はこれまで自分が相続人になる機会はありませんでした。
親が亡くなれば相続人の資格を得ることになります。
冒頭で、相続は大金を得るチャンスだと書きましたが、大金はいらないので親がいつまでも元気で長生きをしてくれることを願うばかりです。
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