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小さな嘘から大きな嘘まで、また相手のことを思ってつくものなど、日常生活には嘘をつく・つかれるということがあると思います。
少し古い話になりますが、2014年には佐村河内さんのゴーストライター問題や、小保方さんのSTAP細胞問題などもありましたね。野々村議員の号泣会見の発端も、もとは彼がついた嘘が発端です。
嘘は原則有効
民法では、この嘘をつく行為を「心裡留保」といいます。
心裡留保は、内心的効果意思(=法律効果を欲する意思)が欠けているので、本来であれば無効であるはずです。
しかし、嘘をついた人が自分が嘘をついていることを知っているのならば、その本人を保護する必要はありません。
ですので、心裡留保は原則有効としています。
ただし、嘘をつかれた相手方が、嘘であることを知っているか(=悪意)、または知ることができた場合(=有過失)には、相手方を保護する必要はないので、相手方が悪意又は有過失の時は心裡留保を無効としています。
心裡留保の適用範囲は、意思表示の全般に適用されます。ただし、身分行為については無効とされています。
それでは条文を見てみましょう。
民法93条 心裡留保について
条文
民法では、心裡留保について93条で定めています。
民法93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
第2項 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
第1項 表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、
「表意者」とは、嘘をついた本人のことです。 「その真意ではないことを知ってした時であっても、」は、「嘘ついた時でも」と読み替えられますね。
そのためにその効力を妨げられない。
条文に特有の言い回しが出てきましたね。そのために効力を妨げられないとは、簡単にいうと、有効ということです。
つまり、第一項では「嘘ついた時でも有効」と言っています。
ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
先に説明した通り、相手方が悪意又は有過失であれば無効ですね。
93条全体を通してみると、「心裡留保は原則有効、ただし相手方が悪意又は有過失の時は無効」となります。
第2項 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
第1項ただし書きで、心裡留保は相手方が悪意又は有過失であれば無効であることを確認しました。
しかし、これを貫き通すと、善意の第三者(何も知らない第三者)が不測の損害を被ることがあります。改正民法では、通謀虚偽表示や詐欺の条文(94条・96条)と同様に、心裡留保にも第三者保護規定が明文化されました。
この規定により、善意の第三者に対しては、心裡留保の無効を対抗することができません。
問題
問題を解いてみましょう。
Q.AがBに土地を売却する意思表示をしたが、この意思表示についてAは本心では売る気がないことを認識しており、かつ、BがAの気持ちを知っていたか知らなかったことにつき過失があった場合は、Aは意思表示の無効を主張できる。○か×か。
〈正解〉
〇
Aは本心では売る気がないので嘘をついています(=心裡留保)。心裡留保は原則有効ですね。しかし、相手方が悪意又は有過失なので、無効になります。無効はAから主張できますので、答えは「○」となります。
続いて、穴埋め条文です。
穴埋め条文
民法93条 第1項、表意者がその( ① )ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
ただし、相手方が表意者の( ① )を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、( ② )とする。
〈正解〉
①真意 ②無効
終わりに
そうすると、有効/無効や相手方の善意/悪意の要件がごっちゃになってくると思いますので、この機会にしっかりと条文を覚えておきましょう。
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