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民法388条 法定地上権とは?
第388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
法定地上権とは、法律上当然に発生する地上権のことをいいます。土地及びその上に存在する建物が同一の所有者である場合に、その土地と建物の一方又は両方に抵当権が設定され、抵当権の実行により所有者が違う人になった場合には、法律上当然に地上権が発生します。
法定地上権の意義
原則として、土地と建物は別個の不動産として取り扱われ、土地の所有者はAさん、建物の所有者はBさんといったように、土地と建物で異なる所有者とすることができます。この場合には、土地に賃借権や地上権等の土地の利用権が設定されていることが通常です。
しかし、土地と建物の所有者が同一である場合は、”自己借地権”は設定することができません。土地と建物の所有者が同一である不動産の競売を実行した結果、土地と建物の所有者が異なってしまうと、競売の際に土地の利用権を設定することは実務上不可能なため、土地の利用権を伴わない建物ができて不都合な状況が生じます。
土地利用権の無い建物の所有者は、建物を収去する必要が出てくるので建物を買う意味がなくなり、抵当権を実行しても、これを買い受ける人が現れなくなります。買受人が現れず、また現れても建物を収去せざるを得ないのであれば、大変な社会経済上の不利益を被ります。そこで、これを回避するために、法律上当然に地上権を生じさせることにしました。これが法定地上権です。
法定地上権の内容
法定地上権の発生は強行規定であるため、当事者で「法定地上権を発生させない」といった特約を定めることはできません。
また、地代や存続期間は、原則として当事者の話し合いにより決めることになります。話し合いで決まらないときは、当事者の請求により裁判所が決めることになります。
実務上、法定地上権の負担の付いた土地は評価額が低く算定されます。そのため、法定地上権の負担のある土地は、法定地上権の負担のない土地よりも売却価格はかなり低くなります。更地の価格の半分ということも少なくありません。これに対し、法定地上権付きの建物価格は、一般的に法定地上権の価額が加算されていることが通常です。
法定地上権の成立要件
①抵当権設定当時に建物が存在すること
②抵当権設定当時に土地及び建物が同一所有者であること
③土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されていたこと
④抵当権の実行により、土地と建物の所有者が異なる者となったこと
①抵当権設定当時に建物が存在すること
更地上に抵当権が設定されていた場合
更地上に抵当権が設定された後に、建物が建てられて抵当権が実行されたときは、法定地上権は成立しません。
更地に抵当権を設定する際に「将来建物を建てた時は地上権を設定するものとみなす」という合意をしていた場合
更地上に抵当権を設定した際に、「将来建物を建てた時は地上権が設定するものとみなす」といった合意を当事者間でしていた場合でも、法定地上権は成立しません。
1番抵当権設定当時は更地であったが2番抵当権設定当時には建物が建てられ、2番抵当権が実行された場合
1番抵当権設定当時は、更地であったため、法定地上権は成立しません。
抵当権設定当時に建物が存在しており、その後建物が滅失し、再築された場合
旧建物を基準として法定地上権は成立します。
②抵当権設定当時に土地及び建物が同一所有者であること
抵当権設定後、土地所有者と建物所有者が異なった場合
法定地上権は成立します。
借地上の建物に抵当権が設定され、土地と建物の所有者が同じになった場合
法定地上権は成立しません。
土地について1番抵当権が設定された当時、土地と建物の所有者が異なっており、土地と建物を同じ人が所有するに至った後に2番抵当権が設定された場合
この場合、1番抵当権が実行されても、2番抵当権が実行されても法定地上権は成立しません。1番抵当権設定当時は土地と建物の所有者が異なっているので法定地上権の成立要件を満たしていません。法定地上権の成立は1番抵当権設定当時を基準にするので、2番抵当権設定当時に土地と建物の所有者が同一となっていても、法定地上権は成立しないことになります。
③土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されていたこと
民法388条は、「土地又は建物につき抵当権が設定され」と規定していますが、土地と建物の両方に抵当権が設定された場合でも法定地上権は成立します。
④抵当権の実行により、土地と建物の所有者が異なる者となったこと
民法388条は、「抵当権が設定され、その実行により」と規定していますが、抵当権の実行の他、一般債権者の申し立てによる強制競売の場合でも法定地上権は成立します。
共有と法定地上権の成立
共有とは、1つの物を複数の者が共同で所有することをいいます。各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じて使用をすることができます。
土地共有の場合
土地がABの共有で、建物がAの単独所有の場合に、土地のAの共有持分に抵当権が設定され実行されても、法定地上権は成立しません。また、A所有の建物に抵当権が設定された場合でも法定地上権は成立しません。
建物共有の場合
土地がAの単独所有で、建物がABの共有の場合に、土地に抵当権が設定され実行された場合、法定地上権は成立します。
また、土地がAの単独所有で、建物がABの共有の場合に、Aの建物の共有持分に抵当権が設定され実行されても、法定地上権は成立します。
土地・建物共有の場合
土地と建物の両方が、ABの共有で、Aの土地の共有持分に抵当権が設定され実行されても、法定地上権は成立しません。
土地共有の場合 法定地上権は成立しない。
建物共有の場合 法定地上権は成立する。
土地・建物共有の場合 法定地上権は成立しない。
問題(穴埋め条文)
第388条 土地及びその上に存する建物が同一の( ① )に属する場合において、その土地又は建物につき( ② )が設定され、その実行により( ① )を異にするに至ったときは、その( ③ )について、( ④ )が設定されたものとみなす。この場合において、( ⑤ )は、当事者の請求により、裁判所が定める。
①所有者 ②抵当権 ③建物 ④地上権 ⑤地代
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