民法第25条 不在者の財産の管理
第25条第1項 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
民法25条では、不在者について規定しています。不在者とは、”従来の住所又は居所を去って、容易に戻ってくる見込みのない者”をいいます。生死が不明であるかは関係がありません。
不在の状態が長く続く場合には、本人の財産を管理し、債権者等の利害関係人の利益や国民経済上の利益を保護しないといけません。そのために規定されたのが、民法25条の「不在者の財産管理の制度」です。
本人が管理人を置いて不在になった場合
本人が管理人を置いて不在となった場合には、その管理人が不在者の財産を管理することになります。このような管理人を”委任管財人”と呼びます。委任管財人は、本人との委任契約の内容に従って財産を管理することになります。
ただし、委任管財人が死亡するなど、「委任管財人の権限が消滅したとき」は、家庭裁判所は、不在者の相続人などの利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができます。
本人が管理人を置かずに不在になった場合
本人が管理人を置かずに不在になった場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分(ex.財産の管理人の選任)を命ずることができます。
家庭裁判所によって選任された管理人を、「選任管理人」と言います。選任管理人は、原則として保存・利用・改良行為をする権限のみを有します。選任管財人は、本人と委任契約を締結している訳ではないので、本人の財産の形態を大幅に変えない程度の権限だけを持っているイメージです。
ただし、財産の管理の必要がある場合は、選任管財人は家庭裁判所の許可を得て、保存・利用・改良行為を超える行為をすることができます。
第25条第2項 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
本人が不在になり、家庭裁判所により選任管財人が選ばれた後に、本人が管理人を置いた時は、家庭裁判所はその管理人・利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消す必要があります。
この命令の取り消しによって選任管財人による財産管理は終了し、選任管財人の権限を喪失します。当然に選任管理人の地位を失う訳ではありません。
民法25条(不在者の財産の管理)に関する過去問
(司平28-4-イ)不在者が管理人を置いていない場合においても,その不在者が生存していることが明らかであるときは,利害関係人は,管理人の選任を家庭裁判所に請求することができない。
(司平28-4-ウ)家庭裁判所が管理人を選任した後,不在者が従来の住所において自ら管理人を置いた場合には,家庭裁判所が選任した管理人は,その権限を失う。
問題(穴埋め条文)
第25条第1項 従来の( ① )を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、( ② )又は( ③ )の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
①住所又は居所 ②利害関係人 ③検察官
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