(旧)民法1031条の遺留分減殺請求権は、改正民法1046条の遺留分侵害額請求権として生まれ変わりました。現在は、遺留分”減殺”請求はしませんので、ご注意ください。
以下は、(旧)民法1031条の遺留分減殺請求権に関する解説です。
(旧)1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる
前回は遺留分について学習しました。
遺留分減殺請求権
現実に遺留分を取り戻すには、遺留分を有する権利者及びその承継人が、相手方(受遺者・受贈者及びその包括承継人)に対して請求することによって実現します。
承継人とありますが、遺留分減殺請求権を譲り受けた特定承継人も請求権者となることが可能です。
また、包括遺贈の場合には、上記の相手方だけでなく、遺言執行者がいれば遺言執行者に対して請求することも可能です。
形成権
遺留分減殺請求権は形成権です。形成権は、意思表示をすることでその権利が実現されるので、相手方の承諾はいりません。裁判上の訴えも不要です。
実務では、内容証明を送るだけで遺留分減殺請求権を行使することができます。
行使の時期
一身専属権
遺留分減殺請求権は一身専属権とされており、例えば債権者代位権の対象とはなりません。ただし、遺留分を有する権利者が、これを第3者に譲渡する等、権利を行使する意思が確定的に認められる場合には、債権者代位の対象とすることが可能となります。
遺留分の算定
(旧)1029条
1項 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
2項 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
1項にある財産の中には、遺贈・死因贈与による財産も含まれます。
(旧)1039条 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
例えば、被相続人が生前に善意でした遺留分権利者に不相当な対価をもってした贈与は、受贈者が悪意の場合であってもその対価を償還する必要はありません。
条文は、「双方」が悪意の場合と規定しているからです。
(旧)1030条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
基本的には被相続人の死亡前1年間にした贈与が対象となりますが、共同相続人の特別受益にあたる贈与は1年以上前にしたものも参入されます。
相手方
請求の相手方は、受遺者・受贈者及びその包括承継人です。
(旧)1040条
1項 減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。ただし、譲受人が譲渡の時において遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2項 前項の規定は、受贈者が贈与の目的につき権利を設定した場合について準用する。
1項ただし書において、悪意の譲受人に減殺請求できるとされているのは、悪意の譲受人には不測の損害がないからです。
減殺請求権の期間の制限
(旧)1042条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
穴埋め条文問題
(旧)1042条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から( ① )行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から( ② )十年を経過したときも、同様とする。
①一年間 ②十年
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